●1968年に放送された木下惠介アワー第4弾『3人家族』で大人気となった竹脇無我と栗原小巻コンビ作では、すれ違う恋人同士を描いたのに対し、その二人が結婚し、夫婦となったらというコンセプトで再登場したのが1970年の『二人の世界』でした。演出は木下惠介監督、脚本は愛弟子の山田太一さんでした。
木下監督とは『今年の恋』というドラマで初めてお目にかかりました。『二十四の瞳』を始め、名作を監督した巨匠ですから緊張してお会いしたのですが、温かく接して下さったことを覚えています。それから『3人家族』『二人の世界』とご一緒させていただきましたが、そのどれもが素晴らしいドラマで、木下監督と素敵な出会いが出来たことに感謝しています。木下監督は芸術的にとても敏感な方で、その集中力に感動しました。私にとっては俳優としてその道を作ってくださった恩師のおひとりです。山田太一さんの脚本は、出演者もスタッフも次回はどうなるのだろうと期待でいつも胸が躍っていました。テレビドラマは、展開と共に会話がとても大切で、その点で山田さんは歴史に残る素晴らしい脚本家です。『3人家族』が山田さんの初の連続ドラマだと後で知りましたが、その第一作に出演できたことをとても光栄に思っています。その初めての出会いから約四十年ぶりに山田さんの脚本で、仲代達矢さんと共演した『遠い国から来た男』に出演できました。その時、私の俳優人生は幸福だったと改めて思いを深くしました。
●『3人家族』『二人の世界』では竹脇無我さんとのコンビが話題になりましたが、あおい輝彦さんを加えてのトリオも新鮮でよかったですね。
二人の男女の出会いが主題の『3人家族』から一歩進んだ結婚と生活という『二人の世界』。新しい気持ちで臨みました。無我さんとは『3人家族』を通じて信頼関係が出来ていましたので、お互いに役作り等、相談することが出来ました。無我さんは映画出身、あおいさんは歌の世界から、私はバレエと演劇を学んでいました。それぞれ育った環境は別々でしたが、テレビドラマという分野で皆が力を合わせて情熱をもって、作品に関わることが出来ました。皆にとっても私にとっても忘れがたい青春時代でした。
●『3人家族』で大人気となった竹脇無我と栗原小巻コンビ作では、すれ違う恋人同士を描いたのに対し、その二人が結婚し、夫婦となったらというコンセプトで再登場となったのが『二人の世界』。演出は木下監督、その門下生の川頭義郎監督、スタッフは松竹映画の人たちですが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
私達もスタッフの方々も「3人家族」が大変な反響でしたの、不安が全く無かったと言うわけではありませんでした。2人の男女の出会い恋愛が主題の「3人家族」から一歩進んだ結婚生活という「二人の世界」。新しい気持ちで臨みました。緊張感はありながら、気心知れたスタッフ、キャストとってもいい雰囲気だったと思います。
●最新作『母と暮せば』を完成させたばかりの山田洋次監督が脚本を手がけた『泣いてたまるか「子はかすがい」』と『初恋』に出演されてらっしゃいますが、山田太一と山田洋次、おふたりの脚本についてどのように感じられましたか。
尊敬するお二人を評論する立場にありません。お二人の作品に出演できたことを
感謝するのみです。テレビドラマだけでなく、俳優は脚本がすべての始まりです。
素晴らしい脚本を手にしたときが喜びであり、幸せなのです。
●『泣いてたまるか「子はかすがい」』では渥美清さんと共演し、そののち映画『男はつらいよ』でも共演されています。渥美さんとの思い出はありますか。
渥美さんは俳優としても人としても素晴らしい方でした。まだ新人の私に
演技に入りやすいように優しくご配慮下さったことを覚えています。
【放送作品情報】
■二人の世界(全26話) [HD初放送]
「3人家族」に続き、竹脇無我と栗原小巻が主演し高視聴率を記録した秀作。
運命的な出会いを果たした二人の男女の、出会いからその後の成長を描く。
★放送日:12/14(月)スタート! 毎週(月) 深0:15~1:15(2話連続)他
■衛星劇場×ホームドラマチャンネル共同企画
『母と暮せば』公開記念 山田洋次 脚本作品特集
栗原小巻出演作2作品を放送!
初恋(単発)
ツルゲーネフの名作“初恋”を題材にした青春物語。
★放送日:12/5(土) 後6:00~7:00 他
泣いてたまるか「子はかすがい」
「男はつらいよ」の原点となった渥美清主演作!
★放送日:12/12(土) 後8:35~9:30 他
Profile:栗原小巻
東京都生まれ。桐朋女子を経てバレリーナを目指し東京バレエ学校に通っていたが、
演技の基礎の必要性を感じて同校を卒業した後、1963年に劇団俳優座に入る。テレビ
『虹の設計』(1964年)、映画『ゴメスの名はゴメス』(1967)でそれぞれデビューし、
1968年の舞台『三人姉妹』で注目を浴びる。そして、現在、
舞台「メアリー・スチュアート」を公演中。
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